慢性閉塞性肺疾患におけるヒストン脱アセチル化酵素活性の低下が重症度を増幅させる

 

出典:THE NEW ENGKAND JOUNAL of MEDICINE

背景

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,病態の進行と共に重症度を増す,慢性的な気道炎症を特徴とする.

 

さまざまな重症度の COPD 患者の末梢肺組織において,疾患の重症度とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性の低下とのあいだに関連性があるかどうかを検討した.

 

ヒストンデアセチラーゼ-(HDAC) は,肺胞マクロファージの炎症性サイトカインの産生抑制に関与する重要な分子である.

 

方法

非喫煙者および喫煙者とそれのさまざまな重症度のCOPD 患者,肺炎患者,嚢胞性線維症患者から外科的に切除した肺組織標本の核抽出物について,HDAC 活性とヒストンアセチル基転移酵素(HAT)活性を測定した.

 

また,非喫煙者,喫煙者,COPD 患者から採取した肺胞マクロファージ,および非喫煙者,喫煙者,COPD 患者,軽症喘息患者から採取した気管支生検標本でも検討を行った.

 

肺組織およびマクロファージから抽出した 全(total)RNA を用いて,HDAC1~HDAC8 とインターロイキン-8 について定量的 RT-PCR を行った.

 

ウェスタンブロット法を用いて HDAC2 蛋白の発現量を定量化した.クロマチン免疫沈降法を用いて,インターロイキン-8 プロモーターにおけるヒストン-4 アセチル化を評価した.

 

結果

COPD 患者から得られた肺組織標本では,臨床病期がすすむにつれ,HDAC 活性が段階的に低下し,インターロイキン-8 のメッセンジャー RNA(mRNA)とインターロイキン- 8 プロモーターにおけるヒストン-4 アセチル化が段階的に増加していた.

 

 

HDAC2,HDAC5,HDAC8 の mRNA 発現と,HDAC2 蛋白の発現もまた,疾患の重症度が高い患者ほど低かった.

 

COPD 患者では,マクロファージと生検標本のいずれにおいても,正常被験者と比べて HDAC 活性が低下していたが,ヒストンアセチル基転移酵素(HAT )活性に差はなかった.

 

一方,喘息患者から得られた生検標本では,HAT 活性が上昇していた.

 

嚢胞性線維症患者および肺炎患者から得られた肺組織では,HAT 活性と HDAC 活性のいずれにも変化はみられなかった.

 

結論

COPD 患者では,総 HDAC 活性が,疾患の重症度を反映して漸進的に低下している.