COPD（肺気腫＋α）におけるグルタチオンの減少を支える抗酸化物質
グルタチオンは、グルタミン酸・システイン・グリシンというアミノ酸からなるトリペプチドで、
人間や動物などの生命維持に欠かせない細胞内で産生される解毒物質です。
グルタチオン、Ｓ－トランスフェラーゼ（ＧＳＴ）という酵素によって細胞内へ誘導された
シスチンがシステインに還元され、グルタチオンが効率的に合成されます。
グルタチオンは、自らのチオール基（SH基）を用いて、活性酸素種や過酸化物などによる
細胞の機能低下や変異をもたらす毒物や、抗生物質、薬物、伝達物質などを結合(抱合) して、
自ら細胞外へ排出することで、細胞の傷害死やがん化や老化を防御するための細胞解毒作業を行っています。
哺乳類の場合、抱合体は血中を移動し、腎臓まで運ばれます。
腎臓でこの抱合体はメルカプツール酸に変換され、胆汁中や尿中に排出されます。
この他、グルタチオンにはシミ・ソバカスの原因であるメラニン色素の生成を促す
チロシナーゼの働きを強く阻害してくれるとともに.驚異的な抗酸化作用で、
シワ・たるみなどといった老化の進行を抑制する働きがあります。
また、グルタチオン・S-トランスフェラーゼにはDNAの変異を起こす
発ガン物質を不活化する作用を持っているので、この酵素を増やすことが、
グルタチオンの産生を含めた細胞レベルの抗酸化作用の強化にとって大変重要になります。
培養細胞の実験においてですが、この転移酵素の働きを抑えると、
細胞内のグルタチオンレベルは急激に低下し、細胞が死滅してしまうという報告がされています。
グルタチオンは、細胞内でしか産生されないので、その前駆体である栄養素
（特にシステインやビタミンB6などを多く含んだ食物）やグルタチオンを産生するための
グルタチオン、S-トランスフェラーゼという酵素の濃度を高める抗酸化物質
（ターメリックの活性成分クルクミノイドなど）の摂取が重要になります。
グルタチオン濃度を高めることは、有害物質を分解、解毒するために多くを必要とする
肝臓機能を活性化させるとともに、およそ38兆個といわれる細胞を持った人
そのものの健康維持や老化の抑制、美肌の保持などに確かな効果が期待できます。
クルクミンはグルタチオン生合成を誘導し、肺胞上皮細胞における
NF-κB活性化およびインターロイキン-8放出を阻害する
出典：PubMed 米国国立医学図書館 国立衛生研究所
研究機関：心臓血管科学センター、生物医学および臨床検査科学部、エジンバラ大学、医学部、エジンバラ、英国。
要約
酸化剤および腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)は、インターロイキン-8(IL-8)を含む
炎症促進メディエーターの転写に関与する核因子-κB(NF-κB)などの転写因子を活性化する。
クルクミンは、多くの疾患の化学療法剤として長い伝統的な使用を持っている
スパイスターメリックに存在する天然のフラボノイドです。
我々は、クルクミンがグルタチオンレベルを増加させ、酸化剤および
サイトカイン誘導NF-κB活性化および培養肺胞上皮細胞からのIL-8放出を
阻害することによって抗酸化および抗炎症特性の両方を有し得ると仮定する。
過酸化水素(H2O2;100マイクロM)およびTNF-α(10ng/ml)を用いたA549細胞の治療は、
NF-κBおよび活性化タンパク質-1(AP-1)活性化とIL-8放出を有意に増加させた。
クルクミンは、NF-κBおよびAP-1のH2O2-およびTNF-α媒介活性化、およびIL-8放出の両方を阻害した。
さらに、グルタミンシステインリガーゼ触媒サブユニットmRNA発現の増加レベルは、
未処理細胞と比較してクルクミン処理細胞において観察された。
クルクミンは、電子常磁性共鳴によって示されるようにスーパーオキシドアニオン(O2*-)および
ヒドロキシルラジカル(*OH)と直接相互作用し、スピントラップテンポンHとのラジカルの相互作用を抑制した。
これは、クルクミンが複数の特性を有することを示唆している:酸素ラジカルスカベンジャーとして、
グルタチオンレベルの調節を介して抗酸化剤、および肺細胞におけるIL-8放出の阻害を介した抗炎症剤である。