喫煙者における気道上皮細胞の遺伝子発現と疾患感受性
要旨 【目的】
本研究では、まずヒト肺細気管支上皮の遺伝子発現を網羅的に解析し、
喫煙者における喫煙感受性遺伝子あるいは喫煙耐性遺伝子の探索を通じて、
治療目標の分子標的を見つけることから開始した。
この準備段階の検討により、抗酸化因子catalaseと
抗酸化酵素ならびに解毒酵素の発現を制御する
転写因子NF-E2-related factor 2(Nrf2)に注目した。
細気管支上皮、マクロファージおよび、
肺胞領域におけるcatalaseとNrf2の発現を定量し、
喫煙、慢性閉塞性肺疾患(COPD)との関連を調べる。
Nrf2を薬理学的に活性化させ抗酸化能を高める
食物性ポリフェノールのひとつクルクミンの
気腫化形成抑制効果を検討する。
【方法】
手術肺組織からlaser capture microdissection(LCM)法を用いて
細気管支上皮、マクロファージと肺胞領域の細胞を採取し、
非喫煙者、COPDのある喫煙者とない喫煙者でcatalase、Nrf2mRNA発現を比較した。
肺気腫モデルマウス(エラスターゼ誘導性肺気腫モデル、
喫煙誘導性肺気腫モデル)を作成し、各々に対して
クルクミン経ロ投与の肺気腫形成に対する効果を検討した。
【結果】
細気管支上皮、マクロファージのcatalase、Nrf2発現は
非喫煙者と比べてCOPDのある過去喫煙者で有意に低下していた。
クルクミンの経口投与によりエラスターゼならびに喫煙誘導性の
肺気腫形成が有意に抑制されることを見出した。
【結論】
気道上皮、マクロファージにおけるcatalase、Nrf2発現の低下は喫煙とCOPDに関連する。
クルクミン投与が有効な予防・治療手段となり得ることを示唆する。